「 嗅覚 」
突然の雨に打たれると、うろたえますよね...。
「晴れ一時雨」という天邪鬼な天気予報に一向に耳を貸さず、1mmも信じることなく飛び出した結果なので、自業自得です。
しかし、ついさっきまで広がっていた青空が、突然として灰色の雲に覆われるその様は、まるで緊迫したシーソーゲームのよう。
ふと、足もとに目を落とすと、アスファルトは雨を含みその顔色を重たく変え、灼熱の路面は雨で冷やされ、そこから昇り立つ“太陽と雨の香り”。
ジーン・ケリーの「雨に唄えば」ならぬ「雨に嗅げば」の心意気で、突然の雨が孕む情緒に満ちたその香りを思いっきり吸い込んでティスティング。
何んとも複雑で豊潤な香りは、嗅覚をやんわりソフトに、そしてボリューミーに刺激し、迂闊にも路上で独りロマンチックな雰囲気に陥ってしまいそ
うな程にミステリアスです。香水の世界で、優れた調香師は自然要素からインスピレーションを授かるといった話もふむふむと頷けます。
「ひょっとすると、感覚機能の中で嗅覚が一番想像力を掻き立てるんじゃないかな」という箸にも棒にも掛からない持論を打ち立てたところで、見計ら
ったかのように再び強くなった雨足に、見事に頭を冷やされることになったわたし。その後、競歩の如きの早足で雨宿り先を探しながら、「今度、あの
人と嗅覚について語ってみよう♪」と画策するあたり、どうやら嗅覚を効かせる以前に“空気を読む”訓練から始めた方が良さそうです。
とりとめない話です、ほんとに。